第42号 東京都高等学校体育連盟 会報
161/241

ていなく、弱気な泳ぎになってしまい、4 位で予選を通過しました。そのあとの 4 × 100m メドレーリレーでは、エントリーを見る限り、フリーリレーよりも決勝に進出できる可能性が高かったのですが、10 位という結果で予選敗退となってしまいました。レース続きの中でも自己ベストに近いタイムで泳ぐタフさがない自分が悔しく、チームのみんなに申し訳ない思いでした。そしてその午後、私のインターハイ最終種目の400m 個人メドレー決勝が終わりました。結果は優勝することができました。ずっと不安で、不安で、でも優勝したくて、そんな心の中の葛藤を乗り越えられたこと、自分に勝てたこと、1 歩を踏み出せたことが本当に嬉しかったです。それと同じくらい、嬉しかったことがあります。それは淑徳巣鴨のみんなの応援です。平泳ぎの時に、私の呼吸のタイミングに合わせて、淑徳巣鴨のみんなが先頭となって、声掛けをしてくれているのが泳ぎながらとても聞こえました。その声が背中を押してくれて、持っている以上の力を引き出してくれたように思います。後から聞いたのですが、淑徳巣鴨だけではなく、東京都の高校のみんなが一緒になって応援してくれたくれたそうです。あの嬉しい気持ちは一生忘れないと思います。また、レース前には他の高校の友達が「頑張ってね!実生ならいけるよ!応援しているよ!」と勇気付けてくれました。こう励ましてくれた人たちのためにも、そして何より自分のために泳いだレースでした。こう振り返ると、私は真の「勝負」と勝負することの「楽しさ」を忘れていたように思います。勝負は、決着がつくまでわからないものなのに、「自分はオリンピアンだから勝って当たり前。」「自分の方がベストタイムは速いから勝って当たり前。」そういう風な考え方をしてしまっていました。謙虚な気持ちも忘れていたかもしれません。どうなるかわからないから、勝てるように頑張る、という勝負の楽しさを忘れてしまっていました。負けてしまったことは悔しかったし、努力が足りなかったのだと思います。しかし今になって考えると、忘れてしまっていたこの大切なことを思い出すために、必要な経験だったのかもしれない、とも思います。去年のインターハイと同様、喜びだけで溢れたインターハイとはなりませんでしたが、喜びよりも大切なことを、学んだインターハイだったように思います。人が全員 1 年生だったので、みんなの力を合わせて泳ぐことはもちろんだけれど、その中でも 3 年生として、私は、自分がみんなを決勝の舞台に連れて行くという強い気持ちがありました。結果は、みんなで目標への強い思いを表すようなレースをすることができ、残り 1 枠の 8 番で決勝に進出することができました。決勝進出はエントリータイムを見る限り接戦だったので、勝ち取った勝利をみんなで泣いて喜びました。そして午後、200m 個人メドレーの決勝がありました。入場すると、淑徳巣鴨のみんなの声が聞こえ、手を振りました。スタート台の前に着くと、いよいよ決勝のレースが始まります。結果は 2 位でした。負けたことが信じられず、悔しく、悲しく、涙がボロボロこぼれてきました。それでも、表彰式では、表彰台に上がると淑徳巣鴨のみんなが大きな声で名前を呼んでくれました。嬉しくてまた涙が出そうになりました。しかし、そう簡単にこのレースの結果を受け止めることはできませんでした。フリーリレーの決勝では、本当に不甲斐ない泳ぎをしてしまいました。どうして自分はチームのみんなのために、自分の結果がつらい時でも、それを振り払って力を出すことができないのだろう、と申し訳ない気持ちでいっぱいでした。また、自分の弱さに落ち込みました。「レースが怖い。負けるのが怖い。泳ぎたくない。」1 日目が終わってから最終日までの間、この気持ちが消えることは一瞬もありませんでした。初めてこんなにもレースに出たくないという気持ちになったと思います。2 日目はレースがなかったので、みんなと応援をしました。決勝では 2 年生の塩田君が、目標であった優勝を達成し、淑徳巣鴨がすごく盛り上がりました。3 日目は 4 × 200m フリーリレーに出場しました。決勝には進めませんでしたが、1 泳を泳がせてもらった私は、少しだけ 1 日目の結果を吹っ切るようなレースができたように感じました。しかし、まだ最終日の 400m 個人メドレーへの不安から、泳ぎたくない気持ちは消えずにいました。そこで、佐賀県まで応援に来てくれていた母と直接会って話を聞いてもらうことにしました。心の中に溜まっていた言葉は止まらず、涙もずっと止まりませんでした。母はひたすら話を聞いてくれました。全て母に聞いてもらった後、自分の本当の気持ちがわかりました。「泳ぎたくない。」という気持ちが本当の自分の思いではなく、「次は絶対に優勝したい。」という気持ちが本当の思いだと、ようやく気が付き、心の中を整理することができました。そして、「これは今乗り越えなければいけない壁なのだ。乗り越えたらまた 1 段階強くなれる。」と思うようになりました。そして最終日が来ました。予選はまだ気持ちが整っ- 159 -

元のページ  ../index.html#161

このブックを見る